コラム
2024-03-19 10:00:00
木の匂い
最近気づいたこと。
私は物心ついた時から木の匂いに囲まれていました。
家の前にはトタン葺きの作業場があり、内装に使うための木を削る機械にいれるとギュイーンという音がして、集塵機のなかにおがくず(木のくず)が集められます。
それは杉やヒノキの混ざった匂い。
父親が作業場の隣で丸太の皮をむくと松の匂い。
母親は上棟前に柱に紙を巻いていました。それは運搬中や工事期間中、柱を守ってくれる紙。紙を巻くのに使う《ふのり》という海藻由来の糊を柱に付ける時のヒノキの匂い。
生活のなかに溶け込んでいたから気づきませんでしたが、木の匂いに囲まれていたようです。
それは手作業から生まれる匂い。
職人さんや父や母が作業する匂い。
懐かしく、心地よく記憶に残っています。
分業化が進んで、手作業で加工することも減りましたが、まだおがくずの匂いだけは嗅ぐことができます。
家をつくる仕事から木の匂いが無くなりませんように。
そして、家をつくる仕事からは木の匂いがしますよと、伝えることのできる私でいたいと思います。