コラム
2025-01-20 09:00:00
遺言状
作家の向田邦子さんがエッセイを書くきっかけになったのはご自身が患った乳がんでした。
「あまり長く生きられないような気がして、誰に宛てるともつかない呑気な遺言状のつもりで、これを書きました」※と当時の心情を語られています。
今日の続きがまた明日もあると、誰しもが思っています。
でも何かのきっかけでそうではないと知った時、「はてどうしよう?」となるのでしょう。
向田さんが頑固な父親や子供のころのご自身の姿を描くことは”精神安定剤”のような役目があったようです。もし同じ立場ならば、どんな選択肢があるのでしょう。
やりたかったこと、思いもよらないこと、どんな選択肢があるか考えてみる価値はあるのではないでしょうか。
向田さんは、エッセイを書き始めて数年後飛行機事故で他界されています。
遺言状はいつ書き始めても早すぎることはないと思うのでした。
※眠る杯『娘の詫び状』講談社 から引用