コラム
はじまりの想い
こんにちは。
今日は最強寒波と言われる日ですが、上棟をしています。
朝は雪が降っていましたが、お客さんの晴れパワーで寒いながらも青空がみえる気持ちのいい現場です。
ご縁をいただき、この日が迎えられたこと本当にありがたい気持ちでいっぱいです。
家を建てる時には建てようと思ってから実際、形になるまでいろいろな乗り越えるべき壁があります。
その壁を乗り越えることができるのは、建てようと思ったはじまりの想いがあるからだと私は思っています。
今日は、はじまりの想い。私の祖父と父親の場合です。
私の祖父は大工修行を終え独立するか、という時に近くに中古の物件がでたと親方から聞き購入を決めます。
借家では床に畳はなく板の上にむしろを敷いて暮らしていたと聞いています。
新しい場所は茅葺屋根の建物。元は事業をされていた方の家で贅沢なしつらえの便器などもあったそうです。昭和16年のことです。
引っ越し当時、私の父親はまだ赤ちゃん。ひとつ上の叔母は歩いてもとの借家に帰ってしまうこともあったそうです。
太平洋戦争を経て、父親は中学を卒業して祖父の元で家業の大工修行をします。兄弟も多く、少しでも早く働くことが家族にとって重要な時代でした。
昭和34年大きな台風に襲われます。伊勢湾台風です。
真夜中、家がみしみしと音をたて雨水が入ってきます。家が倒れるかもしれないと家族で竹やぶにあった小屋に避難したそうです。
当時父親は19歳。まだ小さい兄弟もいて大変怖い思いをしたそうです。
そして昭和40年。家を建てることに。借入や、材料の工面など話は尽きませんが、家族の待望の新しい家が建ちます。
それが今も敷地内にある建物です。
そのときのはじまりの想い。
家族が安心して暮らせる家を建てた祖父や父。
60年を経てリノベーション工事をしながら思うことがあります。
材料にお金をかけることはできなかったけれど、手間は惜しまずに工夫して建ててくれたのだと。
安心して暮らせるとは
建物の形であり
素材の使い方であり
丈夫さが長持ちするひと手間であり。
残してくれた建物から教えられることがたくさんあります。
それははじまりの想いがあったから。
家を考える時、はじまりの想いはひとそれぞれです。
その想いのひとつづつに意味があります。
それを忘れず、家づくりをすることが大切なのではないでしょうか。
そしてそんな想いの近くにいられる家づくりの会社でありたいと考えます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お気軽に
年が明けて、監督から「〇〇さんが新年の挨拶に来られるそうです。」と連絡がありました。
その方は2022年にご自宅が完成したOBさん。
なにかお困りごとでも?と思った私は、都合のつく日をお知らせして当日を迎えました。
当日は、お住まいの暮らし方や最近の出来事など家とは関係ないことも含めお話をさせていただき、
最近働きだした息子のことまで相談したりした後、「そういえば、なにかご相談などありますか?」と
いう私に「いえ、何も。」とのことでした。
お土産までいただいてしまい、帰られた後「なんだか申し訳ないわぁ」と監督につぶやくと、
「社長のこと、第二のお母さんと言われていたので大丈夫ですよ。きっと。」
私の方が感謝をお伝えしないといけないのに・・・なんともありがたいことでした。
「今度はらっぱのお店ができたら、冬は薪ストーブで暖かい粕汁などつくりますので、
私たちの会社にお越しの際は、お気軽に手ぶらでいらしてくださいね。」とお伝えすると、
お客さんはにっこりと「それはいいですね。」と帰って行かれたのでした。
遺言状
作家の向田邦子さんがエッセイを書くきっかけになったのはご自身が患った乳がんでした。
「あまり長く生きられないような気がして、誰に宛てるともつかない呑気な遺言状のつもりで、これを書きました」※と当時の心情を語られています。
今日の続きがまた明日もあると、誰しもが思っています。
でも何かのきっかけでそうではないと知った時、「はてどうしよう?」となるのでしょう。
向田さんが頑固な父親や子供のころのご自身の姿を描くことは”精神安定剤”のような役目があったようです。もし同じ立場ならば、どんな選択肢があるのでしょう。
やりたかったこと、思いもよらないこと、どんな選択肢があるか考えてみる価値はあるのではないでしょうか。
向田さんは、エッセイを書き始めて数年後飛行機事故で他界されています。
遺言状はいつ書き始めても早すぎることはないと思うのでした。
※眠る杯『娘の詫び状』講談社 から引用
『届ける』
2025年が始まりましたね。
年のはじめはいろいろな人が目標を掲げると思いますが、
どんなことをするか?より最後にどうなっていたいか?を考えると道筋が描きやすくなるそうです。
私は2025年の最後にどうなりたいか考えたとき、“出会ったすべての人が快適で健康で安心感のある暮らしを手に入れることができている。(その人基準で去年よりよくなる)”でした。
そのためにきっと私は
どうやったら快適に
どうやったら健康に
どうやったら安心感のある暮らし
ができるよとお伝えしてそんな暮らしを届けてゆく年になるのだと思いました。
快適も健康も安心感も人それぞれですが、私の思う意味で届けていけたら良いと思います。
今までお会いした皆様。
お世話になっている職人さん、業者さん、会社のみんな。
これからお会いする皆様。
お付き合いのほどよろしくお願いします。
2024年を振り返る
今年はリフォーム・リノベで始まりリフォーム・リノベで終わる一年でした。
とはいえ、それは数年前から動きとしてはあり今年はそれがより顕著にみられたという感覚です。
私たちは社内でこれはしないと決めていることがあります。
それはリフォーム・リノベどちらにも言えることですが、部分改修のご依頼であってもその時にしかできないことはお客様にお伝え、もしくはこっそりやるということです。
例えば、「キッチンを直したいです」というご依頼があったとします。
なのに、最初のお打合せで断熱のお話をします。
お客様は「?」と、なることもしばしば。
ここで、もし信頼していただけていない場合には営業して値段を吊り上げるつもりかな?と、思われる方もおられるでしょう。
でも、そのリフォームのタイミングだからこそ出来ることをお伝えしないわけにはいかないのです。
お客様にとっての本当の“よかった”は工事の後にあるからです。
たとえ、キッチンがきれいになったとしても、暖房であたためて断熱がしっかりしていない部屋では、ゆっくりとくつろいで過ごすことができません。
暖房を切ったら即座に部屋が寒くなるのに長居はできないですよね。
このお客様は工事後「朝起きて、暖房のスイッチを切り忘れたかと思いました。」と感想を教えてくれました。
断熱があまりポピュラーなワードでないため、お風呂の改修などではお見積には入れているけれど説明は後で、という場合もあります。
やらなくていいです。と言われるのを防ぐための策です。
お風呂の工事なんて次は何十年後になるかわからないのに今断熱をやらないでどうするんですか?と社内ではみんな思っています。お風呂を変えればあったかい、とは限らないのです。
そんなことをやっている、私たちですがお客様のためを思ってお伝えすることもうまく届けられずにいると感じる時があります。
そのときの必要なことに集中したいというお気持ちもわかります。
なので長期的に見て、今はこれが大事、もし次のタイミングがきたらこれ、と考えてもらえると良いなと考えています。
家は自分の代だけで終わりではないですから。
こんなことを考えながら数年過ごしてきました。
そんな折、私が生まれ育った建物を直して使おうかという案が持ち上がり今年工事に着手することになったのです。
古い家は壊した方が良いなんて言葉を聞くことがありますが、壊した方が良い家とそうでない家があることを私たちは知っています。
もし、今のお住まいを、ご親族から受け継いだ建物をどうしようか?と考えるタイミングでしっかりとリノベーションした建物があることを知ればこんな選択肢もありだよね。なんて思っていただけるかな?
建物が建てられ、今まで使われてきた時間も含めてこれからの世代の方に引き継いでいくお手伝いができたら。
ワクワクした思いで一年お仕事をしていたら、年末嬉しい出来事がプラスされました。
新建ハウジングという建築向け業界紙に私たちの取り組みが紹介されたのです。
UA値0.26W/㎡K、想定C値0.2㎠/㎡ 古民家をリノベモデルハウスに | 新建ハウジング
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建築を携わる皆さんもお客様もすべての人が関わる住まいという悩み、これからの課題。
一歩踏み出すことで解決に近づいて行けたらと思います。