コラム
隙間
昔住んでいた家には蛇がいて、廊下で出会ったときには驚いたものでした。
今年その建物のリノベーション工事をはじめて、少し経ったころ敷地内を移動する蛇を見かけ
追いかけたけれどどこかに隠れてしまいました。
家が工事で騒がしくなり、居場所を追われ脱出を試みたようです。
昔の家は床下、屋根裏、壁にも。いろいろなところに隙間がありました。
最近のリフォームやリノベーション工事では断熱や気密工事をして隙間なくします。
部屋ごとではなく廊下や水回りを含めたエリアを暖かくして、ヒートショックの可能性を減らすためです。
隙間をなくさないと断熱材を入れるだけでは効果は半減どころか逆に結露の原因になってしまうことにもなりかねないのです。
でも人にとって快適な環境も人以外の生き物には暮らしにくい環境である場合もあるでしょう。
かつて同居していた生き物たちには申し訳ないのですが、まずは私たちの快適を優先させてもらいます。
そして、心地よく暮らす建物のそばに自然を残すから戻ってきてくれないかと思うのです。
↑ 私の生家。ただいまリノベーション工事中
薪とトーマス
私たちの会社が所属している団体にForward to 1985 energy life (1985と呼んでいます。)というところがあります。
スローガンは“小さなエネルギーで豊かに暮らそう”です。
地域や全国の工務店で勉強会や年に何度かイベントを開催しています。
その中で省エネな暮らし方を地域の方々に普及啓発があります。
そのひとつとして地球温暖化防止活動センターの推進委員になって活動をすることがあります。
私は昨年推進委員を拝命いたしまして、その活動をはじめました。
それは小学校に行って出前授業をすることです。
その名も「ストップ温暖化教室」。
授業をするのも初めてな私が、ひとつのクラスの授業を受け持つというのはなかなか勇気がいりましたが
私もひとつのことをわかりやすく伝える勉強だと思い、望みました。
先生からは、(温暖化について)理解することはなかなか難しいかも知れませんと伺っていました。
私の中の伝えたいテーマは1985の“小さなエネルギーで豊かに暮らそう”ですがなぜストップ温暖化がそこにつながるのかを伝えるため頭をひねりました。
そこで出てきたのは機関車トーマスです。
かつて、裏山でとった木を燃料にご飯を炊き、暖をとっていた私たちが石炭から始まり石油、電気と地球の奥深くにあるエネルギーを使わないと生活できなくなってしまった今日をトーマスに登場してもらって説明してみました。
理解のほどはわかりませんが、感想に「無駄遣いはダメってことだよね?」と言ってくれた子もあったそうで、まずは初めての出前授業私の中で合格をだしてみたいと思いました。
形がなくなれば記憶もなくなる
私たちは建築をしていく中でお客さんにより良い建物をお届けしたいと考えています。
そのためには日々勉強が必要になります。
構造の安心さ、住まいの心地よさ、挙げるときりがないですがその中で改修について体系的に学べる場として“住宅医協会”があります。
改修には新築にはない別の難しさがあります。
プロとしてお客さんの「よかった」に近づけるご提案は何だろう?という問いに答えるべく、協会の行う住宅医スクールを履修したのは2016年のことです。2021年、実際の工事物件の発表を審査員の先生方に審査していただく検定会を経て住宅医となりました。
私たちは街の工務店として創業して80年以上。
新築だけでなく、改修あってこその工務店だと考えています。
改修をどのようにするかで建物の寿命も、住まい手さんの満足度も変わってきます。
住宅医となってから、その後もいろいろな改修をさせていただきましたが改修の際、大きなテーマとしてあるのは“残すべき建物”ってなんだろう?です。
今回住宅医協会の発行する住宅医通信、各地の住宅医の日々というコーナーを担当させていただきました。残すべき建物を考える時、住宅医の審査員でもある三澤先生は私の中では外せません。今回の文章を通して三澤文子先生、花田佳明先生のお考えに触れられたことはとても幸せなことでした。
これからも、一つでも多くの残されるべき建物が増えると良いと願っています。
住宅医通信 各地の住宅医の日々 https://sapj.or.jp/jutakuinohibi2024-0047/
住宅医協会ホームページ https://sapj.or.jp/
旅の目的地
主人と旅行に行くというと何人かの方に驚かれます。
先日は鹿児島に行った際、一度訪れてみたいと思っていた場所がお休みで最終日に再度訪問することになりました。
それは“かごしま近代文学館”。
鹿児島と縁のある作家さんたちの展示があります。
目的は向田邦子さんの展示です。
以前仕事で鹿児島を訪れた際に、知らなかったとはいえ立ち寄れなかったことが悔やまれた私は行ってみたい気持ちが抑えられず念願かなっての訪問でした。
小学生の頃それも二年間しか住んでなかったのにも関わらず、向田邦子さんは館内で特別扱い、常設展示室がありました。
エッセイに出てきたソファーや、本人の声の留守番電話、インタビューの映像など時間を忘れて満喫することができました。
本当に時間を忘れて長居してしまい、その後の行程がずれ込んでしまったのですが、それもよい思い出です。
ずれ込んだのは主人の行きたかった場所でした。
ここでひと悶着ありそうなところですが、私は気楽なもので満足、満足と帰路についたのでした。
だからですかね、一緒に旅行に行くことができるのは。
↑桜島(右)と向田邦子さんが小学生の時に暮らしていた居住跡地の碑(左)
薪で焚く
私の母方の実家は平成になるまで薪で焚くお風呂でした。
家の軒先には薪が積んであり、そこから薪を運んでお風呂を焚くのは
一つ年上のいとこの役割りでした。
井戸水も利用していました。
山間部なので水道の整備は私たちの住むエリアより後の時代だったのか、
「お水は大切なもの」そんな考え方でした。
なので、お風呂の水は毎日変えるという感じではなく…。
お風呂と脱衣所の間に一つだけ電球がついていて、湯気で“もや″がかかった中で
いとこと湯船に入るのは私の楽しみの一つでした。
お風呂に入ってから寝ると体がホカホカと暖かく、寒い夜も気持ちよく寝られます。
毎日のルーティンではなく「なんだかとてもありがたいこと」「貴重なこと」
という感覚がありました。
今では携帯を見ながらとか、シャワーだけとか、いろいろ聞きますが、
お風呂に入るということを“幸せな時間を過ごす”と考えると、
毎日のなんでもない時間が豊かになるのかも知れません。
↑ この薪ストーブはコラムとは関係ありませんが、薪ストーブは身体の芯から温めてくれる優れもの!
薪ストーブを満喫できる季節は、もうそこまで来てるかな⁇